クレイトン・クリステンセン
Clayton M. Christensen(1952–2020)
優れた経営をしている企業ほど新しい技術に足をすくわれる、という逆説を事例分析から示した経営学者。「破壊的イノベーション」という語を、経営の共通語にまで広げた人物である。
- 肩書き
- 経営学者。破壊的イノベーション論の提唱者
- 活動した国
- アメリカ
- 生没
- 1952–2020
- 分野
- 経営・マネジメント
- 収録した言葉
- 1件
何をした人か
ハーバード・ビジネス・スクールで教え、ディスクドライブ業界の詳細な事例分析から議論を組み立てた。既存企業は既存顧客の要求に応え、利益率の高い上位市場へ資源を配分する。それは合理的な経営判断だが、その結果、性能は劣るが安価で扱いやすい技術が下位市場で育つのを見過ごす。やがてその技術が主流顧客の要求水準に届いたとき、既存企業はもう追いつけない。彼はこれを経営者の怠慢ではなく、正しい経営慣行が生む構造的な失敗として描いた。後年は「顧客が片づけたい用事」という枠組みで顧客理解の方法を提案し、医療や教育にも同じ分析を適用している。実務側ではコンサルティング会社イノサイトを共同創業した。
その後、どう扱われているか
語としての普及と、理論としての検証状況には差がある。キングとバータルトクトフは二〇一五年、理論の代表例とされる七七件を検証し、理論の四つの中核要素をすべて満たす例は一割に満たなかったと報告した。レポアは事例の選び方と、成功例を後から理論に当てはめる手つきを批判している。予測力についても、本人がiPhoneは失敗すると述べた例がしばしば引かれる。他方で「上位市場に引かれて下位を空ける」という記述的な視点は、新規参入の分析枠組みとしていまも使われている。将来を当てる理論ではなく、注意の向け先を変える枠組みとして扱うのが現状に近い。
よくある誤解
「破壊的」は「画期的」「大成功」という意味ではない。本人の定義では、当初は性能が劣り既存企業が相手にしない低価格・周辺市場から始まる特定の経路を指す。優れた新製品を何でも破壊的と呼ぶのは誤用である。
主著・主要論文
- Bower, J. L., & Christensen, C. M. (1995). Disruptive technologies: Catching the wave. Harvard Business Review, 73(1), 43–53.
- Christensen, C. M. (1997). The Innovator's Dilemma. Harvard Business School Press.
- Christensen, C. M., & Raynor, M. E. (2003). The Innovator's Solution. Harvard Business School Press.
- Christensen, C. M., Hall, T., Dillon, K., & Duncan, D. S. (2016). Competing Against Luck. HarperBusiness.
刊行年・出版社まで確認できたものを挙げています。邦訳の有無や版によって表記が異なる場合があります。