ハーバート・サイモン
Herbert A. Simon(1916–2001)
人は最適な選択をするのではなく、条件を満たす案が見つかった時点で探索をやめる。この限定合理性で経済学と組織論の前提を書き換え、ノーベル経済学賞とチューリング賞の双方を受けた研究者。
- 肩書き
- 認知科学者・経済学者。限定合理性の提唱者
- 活動した国
- アメリカ
- 生没
- 1916–2001
- 分野
- 意思決定・行動科学
- 収録した言葉
- 1件
何をした人か
一九四七年の『経営行動』で、組織を意思決定の連鎖として描き直した。人間の注意と計算能力には限りがあるため、すべての選択肢とその帰結を比較することはできない。だから人は満足化、すなわち目標水準を満たす案が見つかった時点で探索を打ち切るという戦略をとる。組織はこの限られた合理性を補うために、判断の前提を配り、役割を分け、手続きを定める装置として理解される。カーネギー・メロン大学ではアレン・ニューウェルとともに人間の問題解決を計算過程としてモデル化し、初期の人工知能研究を切り開いた。晩年には、情報が豊かになるほど希少になるのは受け手の注意である、という指摘を残している。
その後、どう扱われているか
限定合理性と満足化は、行動経済学・組織論・人工知能に共通の前提として定着した。覆されたというより、後続の研究の出発点になっている。もっとも、彼の枠組みがそのまま引き継がれたわけではない。カーネマンとトベルスキー以降の研究は、人の限界を計算能力の不足よりも体系的な偏りとして描いた。ギーゲレンツァーらは逆に、限られた資源での判断が環境と噛み合えば有効だと論じている。どちらもサイモンの前提を共有しながら結論が分かれた。人工知能については、彼とニューウェルが一九五〇年代に示した進度の予測は大きく外れ、記号処理型の路線も後の機械学習に主流を譲った。
よくある誤解
限定合理性は「人は非合理だ」という主張ではない。サイモンの論点は、合理性が認知資源と環境の制約の中ではたらくというもので、人の判断を欠陥として描く後年の偏り研究とは力点が異なる。
主著・主要論文
- Simon, H. A. (1947). Administrative Behavior. Macmillan.
- Simon, H. A. (1955). A behavioral model of rational choice. Quarterly Journal of Economics, 69(1), 99–118.
- Simon, H. A. (1969). The Sciences of the Artificial. MIT Press.
- Newell, A., & Simon, H. A. (1972). Human Problem Solving. Prentice-Hall.
刊行年・出版社まで確認できたものを挙げています。邦訳の有無や版によって表記が異なる場合があります。