野中郁次郎
Ikujiro Nonaka(1935–2025)
企業の競争力の源泉を、情報の処理ではなく知識の創造に置いた経営学者。言葉にならない暗黙知がどのように共有され、形になっていくのかを、SECIモデルとして定式化した。
- 肩書き
- 経営学者。知識創造理論を体系化した研究者
- 活動した国
- 日本
- 生没
- 1935–2025
- 分野
- 学習・フィードバック
- 収録した言葉
- 1件
何をした人か
早稲田大学を出て富士電機に勤めたのち、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得した。南山大学、防衛大学校を経て一橋大学、北陸先端科学技術大学院大学で教えている。出発点は日本企業の製品開発の観察だった。竹内弘高との一九八六年の論文では、工程を順に引き継ぐのではなく、機能横断のチームが重なり合いながら走る開発の進め方を、ラグビーのスクラムになぞらえて描いた。のちにソフトウェア開発のスクラム手法がこの名を借りている。一九九五年の共著では、知識を暗黙知と形式知に分け、共同化・表出化・連結化・内面化という四つの変換が螺旋状に回るSECIモデルを提示した。共著『失敗の本質』では、日本軍の敗因を組織の学習能力の問題として分析している。
その後、どう扱われているか
SECIモデルは知識経営という分野そのものを作り、実務にも研究にも大きな影響を残した。同時に、理論への批判も蓄積している。ゴーレイは二〇〇六年、四つの変換のうち経験的な裏づけがあるのは一部に限られ、残りは事例からの推論に依存していると指摘した。暗黙知の扱いについても、ポランニーのいう暗黙知は形式知へ変換できる別種の知識ではなく、あらゆる知の背景をなすものであり、モデルはこれを読み替えているという批判がある。主に日本企業を題材にしたため、前提が特定の文脈に依存しているという指摘も出た。それでも、知識を組織の資産として扱う視点は定着している。
よくある誤解
SECIモデルの「暗黙知を形式知に変換する」という説明は、原典であるポランニーの暗黙知概念とは異なるという批判が繰り返し出されている。ポランニーの暗黙知は、言語化できる知識に置き換えられる別種の知識としては論じられていない。
主著・主要論文
- 戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎 (1984). 『失敗の本質——日本軍の組織論的研究』ダイヤモンド社.
- Takeuchi, H., & Nonaka, I. (1986). The new new product development game. Harvard Business Review, 64(1), 137–146.
- Nonaka, I. (1994). A dynamic theory of organizational knowledge creation. Organization Science, 5(1), 14–37.
- Nonaka, I., & Takeuchi, H. (1995). The Knowledge-Creating Company. Oxford University Press.
刊行年・出版社まで確認できたものを挙げています。邦訳の有無や版によって表記が異なる場合があります。