ジョン・イオアニディス
John P. A. Ioannidis(1965–)
いま発表されている研究知見の多くは誤りではないか。二〇〇五年の一本の論文でそう問いかけ、研究そのものを研究する「メタ研究」という領域を大きく押し広げた疫学者である。
- 肩書き
- 疫学者。研究の再現性問題を提起した中心人物
- 活動した国
- ギリシャ→アメリカ
- 生没
- 1965–
- 分野
- 研究方法・エビデンス
- 収録した言葉
- 1件
何をした人か
ギリシャで医学を修め、米国で疫学と臨床研究の訓練を受けた。二〇〇五年の論文は実験の報告ではなく、確率の計算による議論である。ある分野で真の仮説が占める割合が低く、標本が小さく、効果量が小さく、分析の自由度が大きく、同じ問いを多くのチームが競って調べているとき、有意と報告された結果のうち本当に正しいものの割合は低くなる。そこから、多くの分野で発表された知見の過半が誤りでありうると論じた。同じ年には、高被引用の臨床研究のうち相当数が、後続の大規模研究で否定または効果を縮小されることを実データで示している。スタンフォード大学ではメタ研究のセンターを共同で率いてきた。
その後、どう扱われているか
この論文は再現性をめぐる議論の出発点の一つになり、事前登録・データ公開・多施設での検証といった制度改革を後押しした。一方、数値そのものへの批判もある。グッドマンとグリーンランドは二〇〇七年、結論の方向には同意しつつ、過半が誤りという断定は仮定に依存しすぎだと指摘した。ヤーガーとリークは二〇一四年、公表されたp値の分布から偽陽性率を推定し、一四%程度と報告している。他方で、心理学の大規模な再現プロジェクトのように、分野によっては再現率が低いことを実測で示した研究もある。分野と手法によって程度が大きく異なる、というのが現在の理解である。
よくある誤解
「発表された研究の半分以上は誤り」という言い方は、実測値ではなく仮定を置いたモデル計算の帰結である。分野や研究設計によって推定値は大きく変わり、これより小さい値を報告する実証的な再推定も複数出ている。
主著・主要論文
- Ioannidis, J. P. A. (2005). Why most published research findings are false. PLoS Medicine, 2(8), e124.
- Ioannidis, J. P. A. (2005). Contradicted and initially stronger effects in highly cited clinical research. JAMA, 294(2), 218–228.
- Ioannidis, J. P. A. (2008). Why most discovered true associations are inflated. Epidemiology, 19(5), 640–648.
刊行年・出版社まで確認できたものを挙げています。邦訳の有無や版によって表記が異なる場合があります。