ポール・ミール
Paul E. Meehl(1920–2003)
専門家が頭の中で総合的に下す判断と、単純な計算式による予測のどちらが当たるのかを、集められる限りの研究を並べて比べた心理学者。その結論は七十年たっても揺れていない。
- 肩書き
- 臨床心理学者。臨床判断と統計予測を比較
- 活動した国
- アメリカ
- 生没
- 1920–2003
- 分野
- 意思決定・行動科学
- 収録した言葉
- 1件
何をした人か
一九五四年の小著で、二十ほどの研究を集め、臨床家が面接や検査から総合的に下す予測と、同じ情報を機械的な式に入れて出す予測を比較した。ほとんどの研究で式が同等以上であり、臨床家が明確に上回った例はごくわずかだった。ミールはこれを人の能力の否定ではなく、情報の組み合わせ方の問題として説明している。人は何を手がかりにするかを見つけるのは得意だが、複数の手がかりに一貫した重みを付けて足し合わせる作業では、単純な式に及ばない。この主張は強い反発を招き、彼は後年、この小さな本のせいで多くの敵をつくったと書いた。ほかにも構成概念妥当性の定式化や、心理学の理論検証の弱さへの批判を残している。
その後、どう扱われているか
結論はその後も支持されている。グローヴらが百三十六件を対象に行ったメタ分析(2000)では、機械的な予測は臨床判断よりおおむね一割ほど正確で、臨床判断が明確に上回った研究は一割前後にとどまった。この知見は採用面接を構造化する根拠にもなっている。ただし差の大きさは中程度で、圧倒的というほどではない。式の精度は入れる変数の質に依存し、稀な事象や、式が想定していない例外情報がある場面では人の判断が要る。近年は、機械的予測そのものが訓練データの偏りを引き継ぐという別の問題も加わっている。
よくある誤解
「人間の判断は無価値だ」という読み方は誤りである。ミール自身、何を測るかの選定や新しい手がかりの発見は人にしかできないと述べており、批判の対象は、集めた情報を頭の中で足し合わせる工程に限られていた。
主著・主要論文
- Meehl, P. E. (1954). Clinical versus Statistical Prediction: A Theoretical Analysis and a Review of the Evidence. University of Minnesota Press.
- Cronbach, L. J., & Meehl, P. E. (1955). Construct validity in psychological tests. Psychological Bulletin, 52(4), 281–302.
- Meehl, P. E. (1978). Theoretical risks and tabular asterisks. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 46(4), 806–834.
刊行年・出版社まで確認できたものを挙げています。邦訳の有無や版によって表記が異なる場合があります。