コンサルティング心理学大全Consulting Psychology Compendium

ピーター・センゲ

Peter M. Senge(1947–)

組織を、部分の集まりではなく互いに影響し合う一つの系として見るシステム思考を経営の言葉に翻訳し、学習する組織という考え方を実務の世界に広めた経営学者である。日本でも読者は多い。

肩書き
経営学者。学習する組織を提唱した
活動した国
アメリカ
生没
1947–
分野
組織開発・変革
収録した言葉
1件

何をした人か

五つの規律として、自己マスタリー、メンタル・モデル、共有ビジョン、チーム学習、そしてそれらを束ねるシステム思考を挙げた。中心にあるのは、目の前の困りごとを個別に潰していくと、時間差を置いて別の場所に問題が現れるという見方である。今日の問題は昨日の解決策から生まれるという言い方で、対症療法が構造を悪化させる型を、成長の限界、問題のすり替わり、共有地の悲劇といった「システム原型」として整理した。組織の学習を妨げるものとしては、自分の職務だけを自分と同一視すること、外に敵を見つけること、じわじわ進む変化に気づかないことを挙げている。参加者が在庫を管理するビール・ゲームという机上演習は、各自が合理的に動いても振幅が拡大することを体験させる装置として広く使われた。

その後、どう扱われているか

学習する組織という言葉は定着したが、概念の測定が難しく、実証研究は苦戦してきた。五つの規律を尺度化する試みでは、想定した因子構造が再現されない報告があり、実務で使われる診断尺度も彼のモデルに正確には対応していない。組織学習の研究はむしろ、学習曲線や吸収能力といった、より限定した概念で進んだ。批判としては、システム思考が権力や利害の対立を扱いにくいこと、システム原型の当てはめが事後的な説明に流れやすいことが挙げられる。一方、部分最適の連鎖という見方自体は、変革の実務で有効な視点として残っている。

よくある誤解

ここが取り違えられやすい

システム思考は因果ループ図を描く技法として教えられがちだが、センゲの主張の要は図法ではなく、遅れを伴う因果を前提に自分の行動を見直すことにある。図が精緻でも、当事者が自分を系の外に置いたままでは意味が薄い。

主著・主要論文

  1. Senge, P. M. (1990). The Fifth Discipline: The Art and Practice of the Learning Organization. Doubleday/Currency.
  2. Senge, P. M., Kleiner, A., Roberts, C., Ross, R. B., & Smith, B. J. (1994). The Fifth Discipline Fieldbook. Doubleday/Currency.
  3. Senge, P. M., Kleiner, A., Roberts, C., Ross, R., Roth, G., & Smith, B. (1999). The Dance of Change. Doubleday/Currency.

刊行年・出版社まで確認できたものを挙げています。邦訳の有無や版によって表記が異なる場合があります。

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