リチャード・ライアン
Richard M. Ryan(1953–)
デシとともに、動機づけを量ではなく質でとらえる自己決定理論を、四十年以上かけて組み立ててきた心理学者。自律性・有能感・関係性という三つの欲求を理論の軸に置いている。
- 肩書き
- 心理学者。自己決定理論を構築した一人
- 活動した国
- アメリカ→オーストラリア
- 生没
- 1953–
- 分野
- モチベーション・働きがい
- 収録した言葉
- 1件
何をした人か
理論の骨格は、動機づけを内発と外発の二分法ではなく、行動の理由がどれだけ自分のものになっているかの連続体として並べ直した点にある。まったくやる気がない状態から、罰や報酬に押される段階、義理や罪悪感で動く段階、自分の価値と結びついて納得している段階、活動そのものが面白い段階までを区別し、後ろに行くほど持続と質が高いと予測する。これを支える条件として、自分で決めている感覚である自律性、うまくやれている感覚である有能感、人とつながっている感覚である関係性の三つを置いた。職場を対象にした研究では、理由を説明し、選択肢を示し、相手の見方を認めるという自律性支援的な上司の関わりが、職務満足や定着と関連することが繰り返し報告されている。
その後、どう扱われているか
三つの欲求と職務態度の関連は、多くの国と職種で再現されている。職場を対象にしたレビューやメタ分析では、欲求の充足や自律性支援が、職務満足・コミットメント・ウェルビーイングと中程度の関連を示す。ただし研究の多くは横断調査で、因果の向きまでは確定していない。報酬が内発的動機づけを損なうという主張は、興味のある課題に事前に約束した物質的報酬という条件では支持されるが、適用範囲は狭い。三つの欲求が文化を越えて普遍かという点も論争が続き、集団主義的な文脈では自律性の意味づけが異なるという指摘がある。
よくある誤解
内発的動機づけを重んじる理論であるため、報酬一般の否定と受け取られやすい。理論が問題にしているのは報酬が統制の手段として使われる場合であり、能力の承認として伝わる報酬はむしろ有能感を支えるとされる。
主著・主要論文
- Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior. Plenum Press.
- Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.
- Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2017). Self-Determination Theory: Basic Psychological Needs in Motivation, Development, and Wellness. Guilford Press.
刊行年・出版社まで確認できたものを挙げています。邦訳の有無や版によって表記が異なる場合があります。