リチャード・ファインマン
Richard P. Feynman(1918–1988)
量子電磁力学でノーベル物理学賞を受けた物理学者。専門の外では、自分自身をだまさないことこそ科学の第一原則だという作法を、誰にでも分かる言葉で説き続けたことで知られる。
- 肩書き
- 物理学者。科学の作法を語り続けた
- 活動した国
- アメリカ
- 生没
- 1918–1988
- 分野
- 研究方法・エビデンス
- 収録した言葉
- 1件
何をした人か
素粒子の相互作用を図として扱うファインマン・ダイアグラムを考案し、朝永振一郎、シュウィンガーとともに一九六五年のノーベル物理学賞を受けた。カリフォルニア工科大学での学部講義をまとめた講義録は、いまも物理教育の古典である。実務の世界でよく引かれるのはむしろ一九七四年の卒業式講演で、形だけ科学の手続きを真似て中身のない研究をカーゴ・カルト・サイエンスと呼び、第一の原則は自分自身をだまさないことだと述べた。うまくいった説明だけでなく、自分の考えが誤っているかもしれない材料もすべて出すべきだという主張である。一九八六年のスペースシャトル事故調査では、部品の低温での硬化を氷水と輪ゴムで公開の場に示し、報告書の付録に組織が事故の確率を過小に見積もった経緯を単独で書き残した。
その後、どう扱われているか
自分をだますなという言い方は、その後の再現性の議論でたびたび参照され、都合のよい分析だけを報告する問題を指す言葉として使われている。ただしファインマンが示したのは規範であって、手続きではない。実際に自己欺瞞を減らしたのは、事前登録、独立した追試、報告基準といった制度的な仕組みのほうであり、個人の誠実さに頼るかぎり効果は限られるというのが現在の理解である。チャレンジャー号の付録も、個人の慧眼としてよりも、確率の見積もりが組織の中で歪んでいく過程を記録した資料として読まれている。
よくある誤解
逸話集の印象から自由奔放な天才として語られやすいが、卒業式講演の主張はむしろ逆で、自分の結論に不利な情報まで全部出すという、地味で手間のかかる手続きの推奨である。
主著・主要論文
- Feynman, R. P., Leighton, R. B., & Sands, M. (1964). The Feynman Lectures on Physics. Addison-Wesley.
- Feynman, R. P. (1974). Cargo cult science. Engineering and Science, 37(7), 10–13.
- Feynman, R. P. (1985). Surely You're Joking, Mr. Feynman! W. W. Norton.
- Feynman, R. P. (1986). Personal observations on the reliability of the Shuttle. Appendix F, Report of the Presidential Commission on the Space Shuttle Challenger Accident.
刊行年・出版社まで確認できたものを挙げています。邦訳の有無や版によって表記が異なる場合があります。