コンサルティング心理学大全Consulting Psychology Compendium
Q&Aアセスメント・組織診断●エビデンス:強い根拠

採用に性格検査を使ってよいですか?

採用の性格検査は補助的には使えますが、単独で合否を決めるには弱い手法です。2022年の見直しで構造化面接 r ≈ .42 が最も高いとされ、他手法との組み合わせ運用と、職務関連性についての説明責任が求められます。

公開 2026-08-25 / 更新 2026-08-25

答え(要約)

使ってかまいませんが、単独で合否を決める道具としては弱すぎます。2022年に妥当性の推定値が体系的に見直され、最も予測力が高いのは構造化面接(r ≈ .42)であることが示されました。性格検査は補助的な情報として、構造化面接や職務知識テストと組み合わせて使うのが妥当です。あわせて、差別の回避・説明責任・応募者の受け止めにも配慮が必要です。

結論

使ってかまいません。ただし、単独で合否を決める道具としては弱すぎます。 採用手法の予測妥当性については2022年に大きな見直しがありました。Sackett et al. (2022) は、従来のメタ分析が範囲制限(応募者の一部しか採用されないことによる相関の縮小)に対して系統的に過剰補正を行っていたと指摘し、推定値を修正しました。妥当性は軒並み下方修正され、手法の順位も入れ替わっています。実務的な結論は、構造化面接を主軸にし、性格検査は補助的な情報として組み合わせるということになります。

なぜそう言えるのか

Sackett et al. (2022) が示した修正後の妥当性(相関係数 r の目安)は次のとおりです。

手法修正後の妥当性
構造化面接r ≈ .42(最も高い)
職務知識テスト.40
経験的キー方式のバイオデータ.38
ワークサンプル(実務課題).33
一般的認知能力.31(首位から陥落)

長らく「認知能力テストが最強」とされてきた通説は、この見直しで修正されました。重要なのは、Schmidt & Hunter (1998) の数値を単独で引用してはいけないということです。同論文の効果量は現在の推定では過大であり、引用する場合は必ず Sackett et al. (2022) による下方修正を併記してください。

では性格検査に価値がないかというと、そうではありません。構造化面接や職務知識テストが測るものと、性格特性が測るものは異なります。Sackett らは続報でも選抜システム全体の設計を見直す必要を指摘しています。個々の手法の順位だけでなく、手法をどう組み合わせるかが問われる段階です。

例外・注意点

第一に、差別と法的な説明責任の問題があります。採用の可否に用いる以上、その手法が職務に関連していることを説明できなければなりません。職務分析に基づかない検査項目で足切りを行うことには、公正性の面でも法的な面でもリスクがあります。

第二に、応募者の受け止め(受容性)です。何のために回答させられているのかが不明な検査は、企業への印象を損ないます。加えて、性格検査の多くは自己報告式であり、応募者が望ましく見えるよう回答を調整しうる状況で実施される点も織り込む必要があります。

第三に、適性の判定と診断は違います。性格検査は心理的な不調や疾患を判定する道具ではありません。医療的な判断を採用場面に持ち込まないでください。

第四に、AIを使った選抜ツールには固有の注意が必要です。Tippins et al. (2021) は、①妥当性エビデンスの不足と不透明性、②訓練データの歴史的バイアスの再生産、③ブラックボックス性、④法的防御可能性、⑤候補者のプライバシーと受容性、という5つの懸念を挙げています。なお採用AIの予測妥当性を検証した大規模メタ分析は現時点で確認されていません。「AIのほうが妥当」と断定できる根拠は存在しない、と理解しておくのが正確です。

関連して知っておきたいこと

構造化面接が最も高い妥当性を示した結果は、「面接をやめるべき」ではなく「面接を構造化すべき」という含意を持ちます。質問項目を事前に決め、全候補者に同じ順で尋ね、評価基準を事前に定義する。この3点を整えるだけでも自由面談との差は生まれます。

今日からできる小さな一歩として、次の採用で使う面接質問を5つ書き出し、それぞれに「どの職務要件を見るための質問か」を添えてください。職務関連性の言語化が、妥当性と説明責任の両方の出発点になります。より詳しくは 採用アセスメントの妥当性 を参照してください。

参考文献

  1. Sackett, P. R., Zhang, C., Berry, C. M., & Lievens, F. (2022). Revisiting Meta-Analytic Estimates of Validity in Personnel Selection: Addressing Systematic Overcorrection for Restriction of Range. Journal of Applied Psychology, 107, 2040–2068.
  2. Schmidt, F. L., & Hunter, J. E. (1998). The Validity and Utility of Selection Methods in Personnel Psychology. Psychological Bulletin, 124(2), 262–274.
  3. Sackett, P. R., et al. Revisiting the Design of Selection Systems in Light of New Findings Regarding the Validity of Widely Used Predictors. Industrial and Organizational Psychology.
  4. Tippins, N. T., Oswald, F. L., & McPhail, S. M. (2021). Scientific, Legal, and Ethical Concerns About AI-Based Personnel Selection Tools: A Call to Action. Personnel Assessment and Decisions, 7(2).

本ページは上記の文献等をもとに編集部が作成しています。数値や結論の詳細は必ず原典をご確認ください。

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