会議の前に個別に話しておくのは根回しですか?
根回しは反対意見を消すためでなく、懸念を早く把握するために使うべきです。事前の不一致がある集団のほうが隠れた情報の発見率が高かったという集団意思決定の研究知見から、根回しの適切な使い方を具体例とともに、丁寧に詳しく解説します。
公開 2026-08-28 / 更新 2026-08-28
答え(要約)
会議の前に個別に話しておくこと自体は否定されません。問題になるのは、それによって反対意見を会議の場から消してしまうことです。研究では、事前に意見の不一致がある集団のほうが、意見が一致していた集団より、隠れた重要情報の発見率が有意に高かったと報告されています。根回しは反対を潰すためではなく、懸念を早く把握し、会議での議論を密にするために使うことが望ましいとされています。
結論
会議の前に個別に話しておくこと自体は、根回しとして否定されるものではありません。問題になるのは、それによって反対意見を会議の場から消してしまうことです。研究では、事前に意見の不一致がある集団のほうが、意見が一致していた集団より、隠れた重要情報の発見率が高かったと報告されています。根回しは「反対を潰す」ためではなく、「懸念を早く把握し、会議での検討を密にする」ために使ってください。
なぜそう言えるのか
Schulz-Hardt et al. (2006) の実験(135の3人組)は、事前の選好が一致していた集団は、隠された重要な情報(隠されたプロファイル)をほとんど解けなかったが、事前に不一致があった集団の正答率は有意に高かったことを示しました。しかもこれは、誰一人として正解を最初から支持していなくても成立しました。事前に異なる意見を聞いておくことは、会議での議論を薄くするのではなく、むしろ密にする方向に働きます。
Nemeth (1986) の理論と実験も、少数意見に触れると拡散的思考が促され、多くの側面に注意が向く一方、多数派の意見にだけ触れると収束的思考が促され、無反省な受容につながりやすいことを示しています。会議前に多数派の意見だけを固めてしまう根回しは、この収束的思考を早めてしまう可能性があります。Brodbeck et al. (2001) も、少数派の異論があると、共有されていない情報の検討が増えることを実験で確認しており、根回しの目的を「反対を減らすこと」ではなく「情報を集めること」に置き換える意義を裏づけています。
「賛成しそうな人だけに事前説明し、会議当日は反対しそうな人抜きで固める」という根回しは、少数意見の価値そのものを消してしまいます。
例外・注意点
事前に個別に話すことが問題になるのは、①反対しそうな人を会議に呼ばない、②会議前に「もう決まったことだから」と伝えて発言を封じる、といった使い方をする場合です。同席者を決める を、賛成しそうな人だけを集める目的で使うと、少数意見の価値そのものを失います。会議前の対話は、反対を先に出させる という目的で使うほうが、決定の質につながります。
関連して知っておきたいこと
事前に話す相手を選ぶときは、誰の困りごとか確かめる を手がかりに、意思決定に実質的な利害を持つ人を優先してください。今日からできる小さな一歩として、次の会議の前に、賛成してくれそうな人だけでなく、懸念を持っていそうな人に一人、先に話を聞いてみてください。
参考文献
- Schulz-Hardt, S., et al. (2006). Group decision making in hidden profile situations: Dissent as a facilitator for decision quality. Journal of Personality and Social Psychology.
- Nemeth, C. J. (1986). Differential contributions of majority and minority influence. Psychological Review.
- Brodbeck, F. C., et al. (2001). The dissemination of critical, unshared information in decision-making groups. European Journal of Social Psychology.
本ページは上記の文献等をもとに編集部が作成しています。数値や結論の詳細は必ず原典をご確認ください。