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用語心理学用語大全●エビデンス:強い根拠

目標設定理論

Goal-Setting Theory

目標設定理論とは、具体的で困難な目標が成果を高めることを示す理論です。ただし複雑な課題では効果が弱まり、自己中心的な個人目標はグループ業績を大きく損なう(d=−1.75)ことがメタ分析で報告されています。

公開 2026-08-25 / 更新 2026-08-25

定義

目標設定理論とは、具体的で困難な目標が「ベストを尽くせ」という曖昧な指示よりも高い成果につながることを説明する理論です。方向づけ・努力・持続・戦略の4つが媒介し、コミットメントやフィードバックが効果を左右します。

定義

目標設定理論とは、具体的で困難な目標が、「ベストを尽くせ」という曖昧な指示より高い成果につながることを説明する理論です。効果が生まれる経路として、注意の方向づけ、努力の動員、持続、そして課題に適した戦略の開発という4つが挙げられます。効果を左右する条件としては、目標へのコミットメント、進捗のフィードバック、課題の複雑性、自己効力感が整理されています(Locke & Latham, 2002)。

どこから来た概念か

1960年代から続く一連の実験研究の積み重ねから体系化されました。産業・組織心理学のなかでも、最も検証量が多い理論のひとつとされています。MBOやOKRといった実務の目標管理手法は、この理論と親和的な発想を持ちますが、理論そのものとは別物です。理論が主張しているのは「目標を設定せよ」ではなく、どのような目標が、どのような条件下で効くのかという条件つきの命題です。

研究では何がわかっているか

まず効果の大きさです。行動変容を扱ったRCT141本・N=16,523 のメタ分析では、目標設定の効果は d = .34 と報告されました。困難な目標、公開された目標、グループ目標のときに最も効果的でした(Epton et al., 2017)。初期のメタ分析でも一貫した正の効果が確認されています(Mento et al., 1987)。

次に、実務上とくに重要な二つの限界です。第一に、課題が複雑になると効果が弱まります。メタ分析では、単純課題で d = .76、複雑課題で d = .42 と報告されました(Wood et al., 1987)。定型作業では強く効く一方、知識労働のように何をすればよいか自体を考える必要がある仕事では、効果が半減に近い水準まで落ちるということです。

第二に、個人目標がグループ業績を壊すことがあります。グループ業績を扱ったメタ分析では、具体的で困難なグループ目標は d = 0.80 と強い効果を示す一方、自己中心的な個人目標はグループ業績を大きく損ない(d = −1.75)、グループ志向的な個人目標であれば正の効果(1.20)を示すと報告されています(Kleingeld et al., 2011)。個人ノルマを積み上げる設計は、チームの成果を積極的に破壊し得るという、極めて大きな負の効果です。

実務でどう使うか

第一に、目標の向き先を確認することです。個人目標を置くなら、それが「自分の数字を上げる」ではなく「チームの成果に貢献する」形になっているかを点検します。第二に、課題の複雑性に応じて設計を変えることです。複雑な仕事では、成果目標だけでなく学習目標や戦略の検討を組み込みます。第三に、フィードバックを必ずセットにすることです。進捗が見えない目標は機能しません。第四に、効果量を過大評価しないことです。d = .34 という水準は、目標設定だけで組織が変わるという期待を支えません。

よくある誤解

「高い目標を掲げれば人は伸びる」ではありません。 コミットメントがない目標、達成可能性が信じられない目標は機能しません。

「個人の目標を全員分足せば組織目標になる」ではありません。 自己中心的な個人目標の d = −1.75 は、その発想への強い反証です。

知識労働でも同じように効く、とは言えません。 課題が複雑なほど効果は弱まります。

よくある質問

目標は高いほど良いのですか?

条件つきです。具体的で困難な目標は曖昧な指示より高い成果につながりますが、効果を左右するのはコミットメント、フィードバック、課題の複雑性、自己効力感です(Locke & Latham, 2002)。メタ分析では単純課題 d=.76 に対し複雑課題 d=.42 と、知識労働に近づくほど効果が弱まると報告されています(Wood et al., 1987)。

個人目標を積み上げればチームの成果は上がりますか?

逆になり得ます。メタ分析では、具体的で困難なグループ目標が d=0.80 と効果的である一方、自己中心的な個人目標はグループ業績を大きく損なう(d=−1.75)と報告されています。グループ志向的な個人目標であれば正の効果(1.20)が示されました(Kleingeld et al., 2011)。

目標設定の効果量はどれくらいですか?

RCT141本・N=16,523 のメタ分析では d = .34 と報告されています。困難な目標、公開された目標、グループ目標のときに最も効果的でした(Epton et al., 2017)。中程度以下の効果量であり、目標設定だけで大きな変化が起きるとは考えないほうが安全です。

参考文献

  1. Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a Practically Useful Theory of Goal Setting and Task Motivation. American Psychologist, 57(9), 705-717.
  2. Wood, R. E., Mento, A. J., & Locke, E. A. (1987). Task Complexity as a Moderator of Goal Effects: A Meta-Analysis. Journal of Applied Psychology.
  3. Kleingeld, A., van Mierlo, H., & Arends, L. (2011). The Effect of Goal Setting on Group Performance: A Meta-Analysis. Journal of Applied Psychology.
  4. Epton, T., Currie, S., & Armitage, C. J. (2017). Unique Effects of Setting Goals on Behavior Change: Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Consulting and Clinical Psychology.
  5. Mento, A. J., Steel, R. P., & Karren, R. J. (1987). A Meta-Analytic Study of the Effects of Goal Setting on Task Performance. Organizational Behavior and Human Decision Processes.

本ページは上記の文献等をもとに編集部が作成しています。数値や結論の詳細は必ず原典をご確認ください。

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