コンサルティング心理学大全Consulting Psychology Compendium
用語心理学用語大全○エビデンス:理論・整理

プロセス・コンサルテーション

Process Consultation

プロセス・コンサルテーションとは、答えを処方するのではなく、クライアント自身が自力で解決できる状態をつくる支援の型です。Scheinによる3つの支援モデル、内容とプロセスの違い、効果検証が確認できていない事実、実務の3ステップと誤解までを整理します。

公開 2026-08-25 / 更新 2026-08-25

定義

プロセス・コンサルテーションとは、Edgar Schein が定式化した支援の型で、専門家が答えを処方するのではなく、クライアント自身が自分の状況を見えるようにし、自力で解決できる状態をつくることを目指す関わり方です。内容(何を話すか)ではなくプロセス(どう話されているか)に働きかけます。

定義

プロセス・コンサルテーションとは、クライアントが自分の状況を自分で見えるようにし、自力で解決できる状態をつくることを目指す支援の型です。支援者は答えを持ち込む人ではなく、いま何が起きているかを一緒に観察する人として振る舞います。

鍵になるのは「内容」と「プロセス」の区別です。内容とは何が議論されているか、プロセスとはそれがどのように議論されているかを指します。議題は毎回変わりますが、遮り方・沈黙の生まれ方・決定の曖昧さといったプロセスは反復します。反復するものに触れるほうが、変化は持続しやすい、というのが基本的な考え方です。

どこから来た概念か

定式化したのは Edgar Schein です。Schein はMITで組織文化とキャリアの研究を進めながら、コンサルタントとクライアントの関係そのものを研究対象にしました。コンサルティング心理学の代表的な先駆者のひとりとして、Argyris、Levinson、Jaques、Alderfer らと並んで挙げられます。

Schein は支援の型を3つに整理しました。

モデル支援者の前提向いている場面
専門家モデルクライアントは必要な情報を持ち、何が必要かも分かっている求める答えが明確なとき
医師–患者モデル支援者が診断し処方する診断能力の差が大きいとき
プロセス・コンサルテーション問題の定義自体をともにつくる何が問題かが定まっていないとき

重要な含意は、最初の2つは前提が満たされないと機能しないという点です。クライアントが自分の問題を正しく定義できていないとき、専門家モデルは「間違った問いへの正しい答え」を生みます。

研究では何がわかっているか

正直に書きます。プロセス・コンサルテーション単体の効果を示すメタ分析を、本サイトでは確認できていません。 この項目は理論と実務上の整理であり、効果検証を伴う知見としては提示できません。

関連する範囲で言えることは二つあります。ひとつは Neuman, Edwards, & Raju (1989) の126研究のメタ分析で、組織開発の介入は単一技法より複合的介入のほうが効果が大きいと示されました。プロセス・コンサルテーションを単独の施策として置くより、診断やチームへの働きかけと組み合わせる設計が支持されます。

もうひとつは von Thiele Schwarz et al. (2021) のSigtuna原則です。ステークホルダーの参画、プログラムロジックの明示、反復的な適応といった10項目は、この手法の発想と重なります。ただしこれも原則の提案であり、効果量の報告ではありません。

したがって evidence 区分は na(理論的枠組み・実務上の整理)としています。

実務でどう使うか

会議に同席する場面を例にします。やることは3つです。

  1. 観察する:誰が何回発言したか、誰の発言のあとに沈黙が起きるか、決定が誰の口から出たか。事実だけを記録します。
  2. 返す:解釈を足さず観察を共有します。「前半30分で発言したのは3名で、決定は最後の5分に出ました」。評価ではなく描写にとどめます。
  3. 問いを渡す:「この進み方は意図どおりですか」。改善案は当事者から出させます。

この3ステップは、1on1でも部門横断のプロジェクトでも同じ形で使えます。

よくある誤解

誤解1:何もアドバイスしないやり方である。
違います。Schein の主張は「3つのモデルを使い分けよ」であって、助言の禁止ではありません。相手が答えを求め、こちらが答えを持っている局面で沈黙するのは、支援ではなく怠慢です。

誤解2:ファシリテーションの言い換えである。
重なりますが同じではありません。ファシリテーションは会議の進行という場面に限定されがちですが、プロセス・コンサルテーションは契約から評価までの関係全体を対象にします。

誤解3:効果が実証されている手法である。
上記のとおり、この手法単体の効果を示すメタ分析は確認できていません。「実証済み」と紹介するのは不正確です。

今日からできる小さな一歩:次の定例会議で、議題ではなく「誰が何分話したか」だけをメモしてみてください。内容から目を離した瞬間に見えるものがあります。

よくある質問

コンサルタントが答えを言ってはいけないのですか?

そうではありません。Schein は支援の型を「専門家モデル」「医師–患者モデル」「プロセス・コンサルテーション」の3つに分け、状況に応じて使い分けるものとしました。答えが明確で相手も答えを求めている局面では専門家モデルが適切です。問題の定義そのものが揺れているとき、プロセス・コンサルテーションが力を発揮します。

コーチングとは何が違いますか?

対象が違います。コーチングは主に個人を対象にしますが、プロセス・コンサルテーションはグループや組織のあいだで起きているやりとりを対象にします。会議での発言の順番、誰が誰を遮るか、決まったことがどう伝わるかといった「人と人のあいだ」が主題です。

この手法自体に効果のエビデンスはありますか?

本サイトの文献一覧では、プロセス・コンサルテーション単体の効果を示すメタ分析を確認できていません。組織開発全般については Neuman et al. (1989) が「複合的介入が単一技法より有効」と報告しており、この手法も複合的な取り組みの一部として位置づけるのが妥当です。

参考文献

  1. Lowman, R. L. (2016). An Introduction to Consulting Psychology: Working with Individuals, Groups, and Organizations. APA Books.
  2. Neuman, G. A., Edwards, J. E., & Raju, N. S. (1989). Organizational development interventions: A meta-analysis of their effects on satisfaction and other attitudes. Personnel Psychology.
  3. von Thiele Schwarz, U., et al. (2021). Getting everydayness into organizational interventions: The Sigtuna principles. European Journal of Work and Organizational Psychology.

本ページは上記の文献等をもとに編集部が作成しています。数値や結論の詳細は必ず原典をご確認ください。

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